小夜更けて

好きなことをただ書いていくブログです

なるべくイイ女に見られたい見栄っ張りの回想

今週のお題「自己紹介」。

葉桜の頃、会社でお花見会がありました。私はパート社員で、今の会社にはようやく一年勤めたところです。パート社員と正社員が同じ席でお花見をするのは、これが初めてだということで、雰囲気がつかめないまま行くことになりました。

うちの会社は、若い人が会長として引っ張る新しい会社で、正社員の平均年齢は30代くらいだと思います。パート社員も同じくらいの年齢層ですが、正社員が深夜まで仕事をしているのに対して、パート社員は遅くても3時のおやつの時間には帰れます。長期の休みも取りやすく、休みの連絡が直前でも当日でも責められることが無い、責任の軽い仕事です。

なので、必然的に子持ちの主婦が多くなります。時給は安いですが条件の良い仕事なので、仕事内容が合えば長く続けることができます。パート社員の一期生も何人か残っています。といっても、2年前に入ったメンバーなので、古株というイメージではありません。

仕事の内容は、正社員の補佐をするというのではなく、まったく別の作業をしているため、普段はあまり交流がありません。ですから、仲間というよりは取引先のようなイメージで、「うちの会社」と呼ぶのも気が引けます。

一年勤めてみて少しずつ分かってきたのですが、パート社員は実験的に雇われて、業績が上がらなければ切る、という位置づけだったようです。そのため、いろいろな事がさぐりさぐり行われていて、この一年の間にも仕事内容や勤務地が変わりました。

簡単だったはずの仕事がどんどん難しくなり、不満を持つパート社員がいてもよさそうなものですが、今のところはそうした声はなく和やかに働いています。パート社員の監督的な立場の正社員の、優しい人柄がいいのかもしれません。パート社員もおしゃべり好きなマダム達ですが、悪口や愚痴を言う人はいません。忙しくて言っている暇もないのです。

私は、今までの会社では、消極的なトラブルメーカー、という厄介なポジションでした。 お局さまににらまれる・既婚者を好きになって会社中にバレる・孤立する・仕事を大量に押し付けられて体を壊してやめる....。 運が悪い、お人好し、悪目立ちしてしまう、そんなキャラだということは自覚しています。でも、今の会社に入ってからは感じのいい人ばかりで、楽しく会話をし、迷惑をかけてしまうこともありません。「仕事をやめたい」と一度も思ったことがないのは、この会社が初めてなのです。

そんな幸運を噛みしめていたときにお花見会に招かれたので、二つ返事でokしました。ただ、今まであまり交流したことのない、正社員や親会社の正社員とも交流する機会になるということで、緊張しましたし、正直に言うと「行きたくない...」という波が何度か押し寄せてきました。正社員の集合時間は早くてパート社員は遅く、準備や片づけを手伝わせてもらえない、というのも疎外感を感じていましたし、なにか嫌な予感がしていました。ちなみに、そう感じていたのは私だけではないようで、パート社員の半数は欠席でした。

そして、当日。天気はくもりで、暑くもなく寒くもなく、絶好のお花見日和です。午後1時に集合、ということで、ランチはとらずに行きました。(「カップうどんを食べすぎてお腹がパンパン」と言っていたパートさんもいましたが。)

お花見会場は小さな公園で、先に集まって準備したり談笑したりしている正社員がいました。私たちパート社員は、お手伝いも求められていないので、着いてすぐに居場所を見失い、手持無沙汰になります。そんななかで、サラダや飲み物を渡され、ブルーシートに座ってもいいと言われました。なんたる難問でしょうか。ブルーシートは広めに敷いてありますが、正社員は誰も座っていません。しかしそこは、私も含め子育てママさんたちの図太さをいかんなく発揮し、ブルーシートの真ん中に陣取って丸く円を描くように腰かけ、完全に自分たちだけの世界でおしゃべりを始めました。

正社員は離れたところで立って料理を取り分けたり肉を焼いたりして、パート社員は離れた場所で腰かけ、されるがままになっている。こんな奇妙なお花見会になるなんて、誰が予想できたでしょう。なんとも言えない変な空気のままでお花見会が進むのか、と思われましたが、「簡単に自己紹介しましょうか。」という社長の呼びかけで、パート社員は正社員や親会社の社員の前に、一列に並ばされました。自己紹介は以前にしたことがあるのですが、さすがに完全に別で楽しむのはきまりが悪いこともあり、これまた変な空気の中での自己紹介が始まったわけです。

まずは、パート社員の自己紹介ですが、シャイな人ばかりなので、ただ名前(しかも苗字のみ)を言ってぺこりとお辞儀するだけです。海の上に風が走り、小さな波が立つ、そんな感じで終わりました。きっと、誰も名前を覚えてはくれないことでしょう。

一方、親会社の社員は、その場を盛り上げようと頑張りました。

年下のかわいい彼女がいることを自慢したり、自虐的に外見のことを言ってきたり、「二人目の彼女をここで探しに来た」なんて言ってくれたり。20代~30代の若いメンズが、(おそらく)鉄板ネタを次々に披露していくのは、日々の生活に追われる主婦からしてみたら圧倒されるというか、微笑ましいというか、とにかく「うふふふ」と笑ってあげるしかありません。素直に楽しんで見ていた人もいましたが、「いたたまれない!」と思っていた人もいたと思います。正社員の側にも、「おいおい、俺はやらねーぞ。勘弁してくれ。」という表情を浮かべている人がいました。

私は、彼らを見て、どこか懐かしいような不思議な気持ちになっていました。あとで理由を考えてみたら、彼らとよく似た人たちに、合ったことがあるのです。それは、私が20代のころに勤めていたゴルフの打ちっぱなしで会ったお客さんたちでした。無愛想な私を楽しませようと、冗談を言ったり下ネタを言ったりしていた、どこぞの会社の社長さんやヤクザさん。オドオドせず、守りに入らず、自由な雰囲気をただよわせ、ダサさやイタさも自覚して茶化せる、そんな人たちです。

きっと、会社のトップも社員も、経済的な余裕がある家庭で育った人の集まりなのでしょう。毎日、ゴルフができるくらいの社会的な成功者の息子たちだから、似ている、と感じたのかもしれません。もしくは、会社自体が成功しているからでしょうか。若くても年老いても、男性が元気な集まりで見くびられないためにする振る舞いは、似ているものなんだな、と思いました。

女好きの強調、とぼけたような表情、仲間の自己紹介に野次をとばす。チームに浸透しているキャラを、忠実に演じる。そっくりです。ゴルフの打ちっぱなしに勤めていて、私は男性はかわいいものなんだな、と思うようになりました。なので、これは嬉しい発見です。

自己紹介タイムの後は、初対面の複数の若者たちとコミュニケーションし、悪目立ちしないように周囲を見ながら気を使い、一口も食事ができない、という試練の時間が待っていました。でも、気を使ってくれる面白い人と会えたので、時間は早く過ぎていきました。

正社員の中では年長組の男性で、見た目はチャラいのですがインドア派で趣味がお菓子作りだったり読書だったり、落ち着いたところがあってパート社員とも波長が合いました。サービス精神たっぷりに付き合ってくれた彼ですが、ふとしたときの目や、別れ際の息のつき方で、無理をしていることは分かります。彼にとっては、これも仕事のうちなのでしょう。

年若い女性とも話しましたが、終始そわそわしていました。「ここにいていいのかな」と顔に書いてあります。私も、そんな表情になっていたかもしれません。

もし、最初の自己紹介で話のとっかかりを作っていれば、きっとその後のコミュニケーションが楽になったのでしょう。ですが、パート社員は足並みそろえて誰一人として名前以外を言わない流れなので、スタンドプレーになってしまいます。チームワークでお互いをいじり合おうにも、そこまで深いつながりはなく、そんな若いノリは卒業してしまっているのです。いったい、どうしろというのでしょう...。

その夜は、考え疲れてぐっすり眠れました。ただ、「ストレスになって2度とこんな経験をしたくない」というわけではないのです。その証拠に、「自己紹介」というはてなブログのお題にかこつけて、お花見会のことを思い出し、一人でニヤニヤしていました。何もしなければ家にずっといられて、刺激のない生活をしている主婦にとっては、情けなくても自己嫌悪におちいっても、得難い体験です。

もし、時間が巻き戻って、あの場でもう一度自己紹介できるなら、どんなことを言うのか、考えてみました。

ミルラムです。アンガールズの田中と大泉洋を足して2で割ったようなイケメンの夫がいます。仲は悪いです。老け顔の男性が好みですが、アイドルも好きです。試したことはありませんが、バイセクシャルかもしれません。女性のみなさんは、そういう目で見てしまうかもしれないので、よろしくお願いします。」

........名前だけの紹介で、本当に良かったですね。